この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 上・下 白石一文 ***

「週刊時代」の編集長、カワバタ・タケヒコは、仕事をエサに、新人グラビアアイドル、フジサキ・リコを抱いた。政権党の大スキャンダルを報じる最新号の発売前日、みそぎのつもりで行った、その場限りの情事のはずだった。世俗の極みで生き続けた男が、本来の軌道を外れて漂い始める、その行き着く先にあるものは?白石一文が全身全霊を賭けて挑む、必読の最高傑作。

スクープ記事は大反響を呼ぶが、上層部から圧力がかかり、編集部内の人間関係もねじれ出す。もつれて膠着する状況のなかで、カワバタは、ある運命的な出会いへと導かれる。まるであらかじめ定められていたかのように。思考と引用をくぐり抜けた後に、「本当のこと」が語られる。現代を描き続ける著者が、小説という表現の極限を突き詰めた渾身作。いよいよ完結。

おもしろくないこともなかったが、響くものが少なかった。
登場人物が多すぎるし、みんなカタカナ表記なのが読みにくいことこのうえなし。
思考と引用をくぐり抜けたあとの、「本当のこと」は、わたしなりに読み取れたと思うけど、でも目新しいことではないと思う。価値観を揺るがすような驚きはなかった。
ラストも納得いかないというか、無理矢理感があって、全体的に残念な印象。