マザコン

マザコン

 
ザコン  角田光代 ***

だれもがマザコンなのかもしれない。
頼まれたコーヒー豆を忘れたおれに佐由理は言った「あなたマザコンよ」。それは違うだろう。いさかいの中ふと思った、おれは母を知らなかった、と――淡くもあり、濃密でもある人とのかかわりを描く作品集。

空を蹴る/雨をわたる/鳥を運ぶ/パセリと温泉/マザコン/ふたり暮らし/クライ・ベイビイ・クライ/初恋ツアー

多作だなあ。角ちゃん。思いきり行間を読む作品集だと思う。描写が語る心象風景を読みとるのは読書のくろうとでさえ、好き嫌いが分かれるところだろう。あいまい。はっきりしない。
良く言えば、ゆだねられている心地よさがある。
でも確かにテーマはマザコンだ。母とはかくも大きく、しかもある意味、ざらついた存在なのだ。