読書

真鶴

真鶴

 川上弘美 ****

>>>失踪した夫を思いつつ、恋人の青茲と付き合う京は、夫、礼の日記に、「真鶴」という文字を見つける。“ついてくるもの”にひかれて「真鶴」へ向かう京。夫は「真鶴」にいるのか? 『文学界』連載を単行本化。>>>amazonより

わー!川上さんに創作の神様がおりてきていらっしゃるー!と、思うところ、多々。
音読したいほど、文章が不思議に美しい。後半からは実際に音読してじっくり味わった。
京の、おどろおどろしく生々しい心の傷が、真鶴へ行って異界的なものと交流することによって、癒されていくさまが川上さんらしい古典的ことばの選び方により描かれ、読み手はつるつると幽玄の世界に引き込まれる。

>>>わたしの思い。底の知れぬ湖の、澄んだ水をどこまでも沈んでゆき、からだの横をよぎる無数の泡にまじるうちに、自分のからだもくるりと泡のかたちに丸まり、そのままついに底まで沈みきって、球体のうごかぬものと成り果てるような。<<<文より引用

鶴田真由のような低くて艶のある声で音読したものを、目をつぶってゆっくり異界を想像しつつ味わいたいような素晴らしい作品でした。