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もしも、私があなただったら

もしも、私があなただったら

もしも、私があなただったら 白石一文 ****

>>>6年前に会社を辞め、郷里の博多に戻ってきた藤川啓吾。小さなバーを経営する現在の彼には、どうしようもない孤独と将来への漠たる不安があるだけだった。そんな彼のもとへ、ある日、会社時代の親友の妻・美奈が突然訪ねてくる。ほろ苦い過去を引きずりながら再会した啓吾に、美奈は驚くような相談を持ちかけてきたのだった―大人の男女が互いに愛し合うとは一体どういうことなのか?誰もが悩む恋心と性愛との不可思議な関係を卓抜な言葉で解き明かす傑作の誕生。>>>amazonより

うーん面白かったけど、相変わらずな白石節だったわ。でも、「このもしも、私があなただったら」という仮定は、言葉のわりにずいぶん一方的だなあと思った。言ってみれば、美奈に都合のよい仮定で、啓吾はその仮定に甘えて、したいことをしているだけのように思う。だからぜんぜん通じ合っていないのだ。だけれども、男と女は通じ合うはずもなく、結局、お互いに関わっていこうと思ったら、大義名分としての何かが必要で、それが「もしも、わたしがあなただったら」がいちばん美しくてよいのかもしれないね。そんなふうに皮肉っぽくとらえてしまいたくなるほど、このふたりの関係は通じ合っているようでズレていると思った。ま、人間関係なんてそんなものかもしれないけれども。