だれかの木琴

だれかの木琴

だれかの木琴 井上荒野 ***

「またお店でお会いできるのを楽しみにしています」平凡な主婦・小夜子が、ふと立ち寄った美容室で担当してもらったスタイリスト・海斗から受け取った一本の営業メール。ビジネスライクなメールのやりとりは、やがて小夜子に自分でも理解できない感情を生んだ。どうしたら、彼のメールを取り返せるのだろう。だんだんと海斗への執着をエスカレートさせる小夜子。だが、自分が欲しいのは本当に海斗なのだろうか……。明らかに常軌を逸していく妻を、夫である光太郎は正視できない。小夜子のグロテスクな行動は、やがて、娘や海斗の恋人も巻き込んでゆくが――。