辻

辻 古井由吉 ****

緩慢に物狂っていく老いた父の背中に、自分の来し方を思いふと立ち止まる中年の男。生涯のどこかの辻で出会い交わり往き迷った男と女。女は受胎して子が産まれ、子は壮年となってまた幾つもの辻に差しかかる。―鋭い感性と濃密な文体で、日常の営みのなかに生と死と官能のきわみを描く十二の見事な連作短篇の世界。

まさに濃密な文章。斜め読みは許されません。男性が老いていくとはこういうことか・・と、思う。狂気と現実の狭間で揺れ動く物語群。ちょっと怖い。唯一、「暖かい髭」がほっとしたような、おもしろみがあった。