つやのよる

つやのよる

つやのよる 井上荒野 ****

夫と、恋人と、父と、関係のあったらしい奔放な謎の女の危篤の知らせをきっかけに、自分の男を見つめ直す女たち。男と女の心の奥の奥を鮮やかに照らし出し、愛のありかを深く問う長編。

「わたしの獣」はひとりの男性について、その周辺の女性の目線で男性像をあぶりだす手法であったが、これはひとりの女性について、女性にかかわった男性の妻か恋人の視点で女性像があぶりだされていく。だから艶さん本人の心情はほとんど著されないし、わからない。ひとりの謎の女を想像する楽しみがそこにはある。