ドーン (100周年書き下ろし)

ドーン (100周年書き下ろし)

ドーン 平野啓一郎 ***

最高の純文学にして究極のエンターテインメント! 2033年、人類で初めて火星に降りたった宇宙飛行士・佐野明日人。しかし、宇宙船「DAWN」の中ではある事件が起きていた。世界的英雄・明日人を巻き込む人類を揺るがす秘密とは?


前作、「決壊」は全く絶望的な作品だったが、これは希望がほの見える。愛は、やりなおせるというキャッチコピーだったが、そんなに甘くはないだろうという気もした。でも、やりなおせたらうれしいが、努力が必要だろう。
近未来のネット社会の架空の技術、散影や、可塑整形のアイデアは斬新だし、対人関係ごとに個人が完全に分裂している分人主義(ディヴィジュアリズム)は相変わらずの平野氏の主張として物語の核をなしている。ああ、そうか、人と人の関係が希薄になっていけばいくほど、許せないことなどなくなっていくのかもしれない。
わたしとあなたの関係は、唯一無二のあなたとわたしの一部分。
今、新聞で連載中の次の作品が楽しみである。