火のみち (上)

火のみち (上)

火のみち (下)

火のみち (下)

火のみち 上・下 乃南アサ ****

たった一人の妹を守るために、人を殺した男。心を焦がす、怒りと憎しみを、「土の冷たさ」だけが鎮めた。時間が止まった刑務所の十年。自由。希望。命の実感。そのすべてを奪われ、赦されることもない男がたどる、壮絶な人生。

古の焼物・汝窯。奇跡のような色。いっさいの感情も、作為もゆるさない、「完全」。その奇跡を再現することが、自分の運命だと信じた。空洞が埋まらない心。それが欲したのは、「天空の色」。触れたい、手に入れたい。男は魔力に取り込まれる。

おもしろかった。殺人は、いくら罪をつぐなったとしてもとりかえしのつかないことなのだ。年を重ねるごとに明確になる自分がしたことの重さ、大きさ。
男は、自分を追いつめることによって、やはりそれから逃れようとしたのだろうか。備前の世界で安穏と生きていくことも可能だったのに。
それともやはり運命のようなものだったのか。。