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- 作者: 吉田修一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/11/05
- メディア: 単行本
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栃木県の公社職員・片桐は、タイのバンコクを訪れる。そこで武志という若い男に出会い、ミントと名乗る美しい娼婦を紹介される。ある秘密を抱えた男がバンコクの夜に見たものとは。
おもしろかった。人としての境界線のようなものはかくも曖昧なのである。そういう曖昧さの浮遊感がよく出ている作品だと思う。片桐が見たという、顔を炎で包まれた男の描写が二度出てくるが、透明に見える炎や、恐怖に見開かれた目、動かなくなった背中などが暗示する片桐の内面の描写があるからこそ、ラストの軽さに深みが感じられるのだと思う。