雉猫心中

雉猫心中

雉猫心中 井上荒野 ****

これは愛だろうか?新直木賞作家、受賞後初の長篇小説。ともに結婚している男女が、むさぼるように求めあう愛欲の一年を見事な文体で描く、著者の最高傑作。不穏な空気がサスペンスを呼ぶ。そして、静かな官能があふれてくる。「大貫知子は、物欲しげに俺を見た。それがあの女に対する、俺の最初の印象だった」「晩鳥。荒地に生えた一本の木みたいな男。孤独に晒されているのではなくて、孤独に守られているような男」巧緻な構成で編み上げられた至高の恋愛小説。

うーん。気持ち悪い。きもちわるいんだけどおもしろい。でもこれは恋愛小説ではないでしょう。人間の本性とは、性愛の本質とはこういうものかもしれないと思うのが怖ろしい。そんなことはないと思いたい。女から見ても間違いなく大貫知子は悪女だ。たとえ意識していなくとも。