奇跡も語る者がいなければ (新潮クレスト・ブックス)

奇跡も語る者がいなければ (新潮クレスト・ブックス)

奇跡も語るものがいなければ ジョン・マクレガー ***

イングランド北部のある通り。夏の最後の一日がはじまる。夕刻に起こる凶事を、誰ひとり知る由もないまま―。22番地の小さな眼鏡をかけた女子学生。彼女を密かに恋する18番地のドライアイの青年。19番地の双子の兄弟。20番地の口ひげの老人。そして、16番地の大やけどを負った男と、その小さな娘…。通りの住人たちの普段どおりの一日がことこまかに記され、そこに、22番地の女の子の、3年後の日常が撚りあわされてゆく。無名の人びとの生と死を、斬新な文体と恐るべき完成度で結晶させた現代の聖なる物語。

そこにあるものを言葉というカメラで、ひとつひとつ丁寧に撮影するように描写しつつ、物語はゆっくりと進んでいく。めずらしい構成の小説ではないだろうか。
決して読みやすくはなかった。読み飛ばしができないわりに心に響く言葉が少なく、単なる情景描写が多い。でもだからこそ映像的で想像力を刺激し、面白いといえば面白かった。あんまり好みではないが。。