船泊まりまで

船泊まりまで

船泊まりまで 片山恭一 ****

あやうく、悲しく、美しい、愛の道行き
システムエンジニアの俊一、その妻・冴子は、世間や周囲に対し、常に一定の距離を取り、決してうち解けることがない。しかし、共犯関係を結ぶがごとく、それぞれを縁とすることで、静かで穏やかながら充足した日々を送っていた。そんなふたりに、彼女の姉夫婦から代理母になってくれないか、との相談が持ち込まれる。その選択を受け入れたふたりだったが、やがてお腹が大きくなるうちに冴子に変調が起こり始める。毎夜、ひとり深夜の徘徊を続ける冴子。その彼女の後を、じっと追い続ける俊一。そんなある日、冴子が河に身を投げようとするが……。読む側の立場を揺さぶる、あやしく、悲しく、美しい愛の道行きを描いた物語。