お早よう [DVD]

お早よう [DVD]

お早う ***

戦後の小津安二郎監督作品の中でもっとも軽妙コミカルな作品。何せ主役は父でも嫁ぐ娘でもない、下町の子どもたちなのだ。10件ほどの家が並ぶ住宅街の人々の日常が、子どもたちを主軸に捉えられていく。
各家の大人たち(佐田啓二久我美子笠智衆など)の交流や葛藤といったドラマもあるにはあるが、ほかの作品群に比べるとサラリと流されており、やはり子どもたちのわんぱくな言動の数々によって、市井の平和な日常の素晴らしさが淡々とほのぼのと醸し出されていく。小津監督は、松竹伝統の長屋ものを戦後復興してきた当時の新興住宅街に置き換えることで、昔も今も変わらない人々の温もりを描きたかったようだ。フラフープやテレビなど、当時流行のアイテムがさりげないユーモアのために機能しているあたりも、さすがの貫禄であった。(的田也寸志