夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語

夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語

夜想曲 カズオ・イシグロ ****

ベネチアサンマルコ広場を舞台に、流しのギタリストとアメリカのベテラン大物シンガーの奇妙な邂逅(かいこう)を描いた「老歌手」。芽の出ない天才中年サックス奏者が、図らずも一流ホテルの秘密階でセレブリティと共に過ごした数夜の顛末(てんまつ)をユーモラスに回想する「夜想曲」を含む、書き下ろしの連作五篇を収録。人生の黄昏を、愛の終わりを、若き日の野心を、才能の神秘を、叶えられなかった夢を描く、著者初の短篇集。

カズオ・イシグロはこんなにユーモラスな物語も書くのですね。時折、読みながら声を出して笑ってしまった。いちばんおもしろかったのは、「降っても晴れても」。音楽が物語のキーになっているのも素敵。サラ・ボーンの「パリの4月」を聞きたくなった。