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メタボラ

メタボラ

メタボラ 桐野夏生  *** 
>>>なぜ「僕」の記憶は失われたのか? 世界から搾取され、漂流するしかない若者は、日々の記憶を塗りかえる。破壊されつくした僕たちは「自分殺し」の旅に出る。孤独な魂の冒険を描く、まったく新しいロードフィクション。 >>>amazonより

***以下、ネタバレあり。***
メタボラとは、新陳代謝の意味があるらしい。舞台は沖縄。登場人物のキャラクターは、充分魅力的だし、記憶喪失の「僕」が沖縄の深い森から逃げ出してくる導入部分は圧巻。
気になったのは、電気部品メーカーの工場で働く「僕」の環境のこと。これが生きる力の弱いワカモノの労働者の現実なのか。取材して書かれているのだろうから真実に近いとは思うが。これでは一昔前のように「自分探し」などしている余裕はないだろう。自分を極限まで見下げられ否定されているとしか思えない。死にたくもなるだろう。今はネットカフェ難民や、ワーキングプアなども社会問題となっているが、どうしてこんなことになってしまったのか。政治にほとんど興味のないワカモノのカリスマも、ラストに恩人とも言える人物を裏切って逃げる主人公も、まったく自分のことしか考えていない。自分を生かすということは、他人のためになることだと思う。自分のことしか考えない、自分さえ良ければいいという考えは、まさに自分を殺すことだ。それすらも「ズミズミ上等」なのか。。
なんともいえない読後感だった。